『ヒポクラテスの悔恨』
中山七里
令和5年6月20日 初版第1刷発行
本書は『ヒポクラテス』シリーズの第4弾である。
浦和医大法医学教室の光崎藤次郎教授への脅迫状(犯行予告)がネットに書き込まれた。
『親愛なる光崎教授殿。インタビューではずいぶん尊大なことを言っておられたが、ではあなたの死体の声を聞く耳とやらを試させてもらおう。これからわたしは一人だけ人を殺す。絶対に自然死にしか見えないかたちで。だが死体は殺されたと訴えるだろう。その声を聞けるものなら聞いてみるがいい』
……と。これから五人の死体の声を聞くことになる短編集である。
全てが一見普通の事故死、病死に思える死体を少しの疑問から殺人ではないかと疑い捜査をする埼玉県警の古手川和也、法医学教室の助教・栂野真琴のコンビが犯罪者を見つけるために奔走する。
他の登場人物、アメリカ生まれの准教授.キャシー・ペンドルトン。埼玉県警の渡瀬警部など個性的な面々のキャラクター造形も鮮やかで、様々な形で人間の奥底に潜む「悪意」を炙り出す。
軽快な文章も相変わらずうまく、重いテーマを飽きさせず読ませる力量はさすがとしか言いようがない。