『黄土館の殺人』
阿津川辰海
あとがき・阿津川辰海
2024年2月15日 第1刷発行
本書は、〈館四重奏〉シリーズの3作目にあたる。。第一作『紅蓮館の殺人』は山火事、第二作『蒼海館の殺人』では水害を扱っている。
クローズド・サークルと化した館を、「地水火風」の四元素になぞらえて形成するシリーズである。また「春夏秋冬」の設定も用意し、『紅蓮館』は火と夏。『蒼海館』は水と秋。『黄土館の殺人』の今回は、地と冬を扱っている。
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方に暮れた。復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となたからだ。その時土砂の向こうから女の声がした。声は、交換殺人を申し入れてきた__。同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。
交換殺人ものは多々あれど、ここまで驚愕の設定には度肝を抜かれる。何故、交換殺人が連続殺人にすりかわったのか?
荒土館の中で必死に推理する田所。
そこに更に地震が起こる。
様々な謎。
怒涛のトリック。
謎の「狐」。
推理を拒む元名探偵。
田所は無事に生還できるのか?
まさに怪作と呼ぶに相応しい作品である。