『黒野葉月は鳥籠で眠らない』
織守きょうや
解説・芹沢央
木村&高塚弁護士シリーズ
・作中の法律は単行本刊行時の2015年のものです。現在は改正されているものもあります。
・本書は2019年7月に刊行された講談社文庫『少女は鳥籠で眠らない』を加筆・修正したものです。
2022年7月17日 第1刷発行
教え子の女子高生への淫行容疑で家庭教師の男が逮捕された。その弁護人になった木村龍一は、非協力的な被疑者に戸惑うばかり。だが、不起訴を望む被害者の黒野葉月が木村のもとを訪れ、法に則った驚くべき切り札で事件をひっくり返してしまう(表題作より)。新米弁護士の木村が先輩の高塚と共に難儀な依頼を解決。鮮やかなどんでん返しと感動の結末が待ち受ける連作短篇「木村&高塚弁護士」シリーズ第1弾が新装版で登場!
「黒野葉月は鳥籠で眠らない」
「石田克志は暁に怯えない」
「三橋晴人は花束を捨てない」
「小田切惣太は永遠を誓わない」
の4つの短編が収録されている。
どの作品も法律を使った、どんでん返しもので痛快……なはずなのだが、どこか倫理的に納得できない。
読者によって作品の評価も変わるだろうし、好き嫌いも別れるであろう。
個人的には、3作品目が私の倫理的に苦手なラストである。
文章もテンポよく読ませるし、キャラクターも立っていて面白い。
解説にも引用された高塚が木村に話した
〈「覚えておけばいいよ。絶対に欲しいものが決まっている人間が、どれだけ強くて、怖いものかを。」〉
という台詞が印象的である。
この短編集の全てが、この台詞を思い出させる。一見ハッピーエンドに見える結末が、倫理的に照らし合わせると、とたんに座り心地が不安定になる。
しかし、もう事件は解決しており、弁護士の出る幕ではなくなっている。
新米弁護士である木村龍一が、依頼主に深入りし過ぎて、違和感を感じてしまうところも人間臭くて親近感をもってしまう。