『突然の明日』
徳間文庫
徳間文庫41年目の本気【トクマの特選!】
有栖川有栖選 必読!Selection3
Introduction
突然の明日
Closing
本作は1977年1月刊の講談社文庫版を底本といたしました。
2022年2月15日 初刷
白昼、銀座の交差点で女が消えた!__元恋人の奇妙な人間消失を語った翌日、食品衛生監視員の兄はマンションの屋上から転落死した。同じ建物内では調査中の人物が毒殺されており、兄に疑惑が。職を辞した父と共に毒殺事件の調査に乗りだす娘の行く手には”消えた女”の影が。切れ味鋭いサスペンスに家族再生の人間ドラマを融合させた、ヒューマニズム溢れる佳作。
本作の肝は、銀座の交差点で消えた女が、同時刻に九州にいた……というアリバイを崩す過程である。しかも旅の途中から男と一緒だったという鉄壁のアリバイである。
妹は、ある男性と共に九州に向かい、アリバイを崩そうとする。
もうひとつは、家族の再生の物語である。兄は結婚していたが、妻と子供を相次いで亡くし笑顔が無くなった。
その兄に恋人が出来たのだが……。
兄の殺人容疑で、姉は婚約を破棄され、父と弟は職を失った。家族がバラバラになってしまい苦悩する父。
父と妹は、共に兄の殺人容疑を晴らそうと動き出す……。
上質なサスペンスと家族再生の物語の見事な融合。必読である。