『図書館の殺人』
青崎有吾
解説:佐々木敦
2018年9月14日 初版
2022年12月9日 4版
本作は、『体育館の殺人』『水族館の殺人』に続く「裏染天馬シリーズ」の長編第3弾である。
期末テスト中に、風ケ丘図書館で男子大学生が、山田風太郎の『人間臨終図鑑』で撲殺された。
しかも現場には謎のメッセージが残されていた。警察に頼まれ独自捜査を始めた。
今回のテーマは、「ダイイングメッセージ」。
しかし、それだけでは何の役にも立たない。
余りにも不確定要素が多過ぎるからだ。
ロジカルな推理と巧みなプロットそれに「青春小説」のおもむきは、更に完成度を増しており、読者を魅力する。
今回も不可能犯罪の匂いはするが、その謎は最初に読者に明かされている。
推理をするには、読者に有利な情報を公開して、それでも尚且つ元版当時には入れていなかった「読者への挑戦状」を挟み、裏染天馬の推理の鮮やかさを演出する。
怪しげな登場人物や白戸刑事の部下など、レギュラーメンバー意外にも個性的な登場人物を加え、殺人現場からなくなった本、謎の血痕など事件に深みをもたせるギミックなどサービス満点。
裏染天馬の裏事情にも少しづつメスを入れている。
本書の刊行前に、短編集を上梓するなど人物像にも深みを持たせている作者の筆力にも感服した。