『黒死館殺人事件』
文庫解説 細谷正充
小栗虫太郎略年譜
2008年5月20日 初版発行
2023年10月30日 21刷発行
やっと……ようやく……今まで何度挫折したか解らない『黒死館殺人事件』を読了。
黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。
確かに「探偵小説」の体制は整っているが、そのペダントリーに何度も挫折した作品。
今、読了してみても、正直本書の面白さを理解したとは断言出来ない。
突拍子もない論理が構築され破壊されていく様を何度も何度も繰り返し読まされて、一体何処が着地点なのか読者は最後まで振り回される。
先程「論理」と書いたが、普通の「本格ミステリ」に於ける「論理」とは全く別物で、読者は煙に巻かれたような気分を味わうだろう。綿密に描かれた黒死館の様相然り、エンクロサイペディックスな法水麟太郎の「推理?」も然り、登場人物の癖のある「性格」も然り……
『黒死館殺人事件』を楽しめた読者は幸せである。