『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』
文庫書き下ろし
ハルキ文庫
2021年8月18日 第1刷発行
2021年9月28日 第2刷発行
刑務所帰りの土橋が、老人ホームで起こした『大量殺人事件』。当初、老人に対するヘイトクライムと思われた事件だが、殺された吉永欣造が、32年前に発生した、小学校二人による『老人連れ去り殺人事件』の被害者の息子であることが判明。捜査に当たっていたL県警本部の捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎は警察官だった父との幼少期の苦い記憶を思い起こす……。唯一の友である鴉とともに事件に迫る恭一郎。ラストに読者は必ず驚愕する!気鋭の著者が描く警察ミステリの登場!
「鳥越恭一郎」シリーズ第一弾。
犯人の人間関係が徐々に明らかになるうちに、過去の事件との類似性が犯行動機を浮かび上がらせる。児童虐待、ネグレクトなどの経験から歪んだ暴力性をもった子供が生まれ、様々な犯行を犯す。負の連鎖を鳥越は防ぐことが出来るのか?そして事件の黒幕は?
サスペンスの中にもユーモアを紛らわせ、読みやすくする一方で、著者はあるトリックを仕掛ける。
何かあるとは思っていたが、見事にしてやられた。
昭和という時代と現在とが、奇妙な形で結び付く。その筆捌きもお見事。
大変、面白く読めた。