『悪意』
解説・桐野夏生
講談社文庫
加賀恭一郎シリーズ
2001年1月15日 第1刷発行
2004年1月9日 第110刷発行
本書は、1996年9月に株式会社双葉社より単行本として、2000年1月に講談社ノベルスとして刊行されました。
人気作家が殺された。逮捕されたのは第1発見者で親友の野々口修。彼は犯行を認めたが、決して動機を語らない。やがて部屋から大量の未発表原稿や被害者の前妻の写真が見つかり、意外な動機が浮かび上がる。観念した野々口はすべてを手記として書くが、それは、あらゆる人間関係を根底から覆すものだった。
本書は、加賀恭一郎シリーズ第3段であり、異色のホワイダニットである。
タイトルの『悪意』には、様々な意味が込められており。最終的に底知れない人間の悪意をまざまざと見せ付けられる。
本書の構成は、野々口修と加賀恭一郎の手記が交互に描かれるのが特徴であり、読者はそれぞれの手記に引きずり回される。
その手記は終始静寂な雰囲気を醸し出しており、あらゆる人間の「悪意」を読まされる……。これ以上はネタバレに繋がるので書かないが、読後感は非常に後味が悪い。とだけ書いておく。
しかし、本書は紛れもなく傑作であり、加賀恭一郎シリーズの中でも出色の出来栄えであることは付け加えておく。