『後ろ姿の聖像 もしもお前が振り向いたら』
徳間文庫
徳間文庫42年目の挑戦
【トクマの特選!】
有栖川有栖選 必読!Selection9
Introduction
後ろ姿の聖像
もしもお前が振り向いたら
前章 アリバイ崩し
中章 再捜査
後章 真犯人
Closing
この作品は1988年3月刊講談社文庫を底本としました。
2023年2月15日 初刷
真夏の工場駐車場で絞殺された元女性歌手。
発表前の歌謡曲「そのとき」の盗作を巡る八年前の殺人事件の目撃者であったことから、出所したばかりの犯人・沖圭一郎に容疑が。しかし沖は、鉄壁のアリバイを隠し、あえて脆弱な嘘で自ら冤罪を課そうとする。登場人物の奇妙な行動の謎がすべて一曲の歌詞へと収束していく、逆説的な2重アリバイの離れ業。作家生活二十年目の野心作!
本作もまた、笹沢左保のロマンと本格推理小説が見事に融合した作品である。
一見単純に見えた事件が、容疑者の不可解な偽アリバイ(完璧なアリバイがあるにも関わらず)を軸に奇妙な歪みをみせる。
その「偽アリバイ」をついた意味を探っていくうちに、作者の罠に嵌っていく快感を堪能する作品。秀逸である。