『白鳥とコウモリ』上
この作品は2021年4月小社より刊行されたものを文庫化にあたり二分冊にしたものです。
令和6年4月5日 初版発行
2017年、東京竹芝で善良な弁護士、白石健介の遺体が発見された。捜査線上に浮かんだ倉木達郎は、1984年に愛知で起きた金融業者殺害事件と繋がりがある人物だった。そんな中、突然倉木が二つの事件の犯人と自供。事件は解決したと思えたが。「あなたのお父さんは嘘をついています」。被害者の娘と加害者の息子は、互いに父の言動に違和感を抱く。
『白鳥とコウモリ』下
この作品は2021年4月小社より刊行されたものを文庫化にあたり二分冊にしたものです。
令和6年4月5日 初版発行
令和6年8月30日 9版発行
父の死に疑問を持つ美令と父の自供に納得できない和真。事件の蚊帳の外の二人は”父の真実”を調べるため、捜査一課の五代の知恵を借り禁断の逢瀬を重ねる。過去と現在、東京と愛知、健介と達郎を繋ぐものは何か。やがて美令と和真は、ふたり愛知へ向かうが、待ち受けていた真実は__。光と影、昼と夜。果たして彼等は手を繋いで、同じ空を飛べるのか。
本書を読むきっかけは、前にAmazonで予約注文していて届いた『架空犯』が、シリーズものだったことが分かったからである。
シリーズの前作である本作を読むことになったのは必然であった。
父が犯人であったならば、以前に捕まって隔離され自殺した男は、無実であり冤罪だったことになる。しかも愛知で起きた事件は、時効を迎えており。捜査は中断になっていた。しかし父の自供に違和感を感じた息子の和真は、独自に事件の真相を追い続けることにした。その冤罪の被害をうけていた母と娘は、スナックを始めていて、その店に父が頻繁に足を運んでいたことを知る。
また、東京の事件の被害の娘もまた、加害者の自供に父らしくない言動を見つけ、独自に事件の真相を追い続けていた。
その二人がふとしたきっかけで会話を交わすようになり、次第に二人は事件を共有することになった。そして漸く辿り着いた真相は……。
作者の練り上げたストーリーと解決は、うまいとしか言いようがない。
文章も読みやすく、上下巻とも一気読みしてしまった。
この作品で、綺麗に話は完結しているのだが、気になるのは、美令と和真の行く末だ。
お互いに好意を持っているのには違いないが……。
この二人がシリーズのキャラクターになるのかは、まだ『架空犯』を読んでいないので解らないが、そうあって欲しいと願う気持ちは持っている。