rirasoujiken’s blog

このブログは、鬱病(離人症、乖離。自立支援、手帳3級)である管理人が主にミステリーの読書感想文をアップします。何卒、ご笑覧下さいm(_ _)m

読了しました。

『悪の芽』

貫井徳郎

解説・石井光太

角川文庫

本書は、2021年2月に小社より刊行された単行本を加筆修正のうえ、文庫化したものです。

令和6年1月25日 初版発行


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大手銀行に勤める41歳の安達は、無差別大量殺傷事件のニュースに衝撃を受ける。40人近くを襲ってその場で焼身自殺した男が、小学校時代の同級生だったのだ。あの頃、俺はあいつに取り返しのつかない過ちを犯した。この事件は、俺の「罪」なのか__。

苦悩する安達は、凶行の原点を求めて犯人の人生を辿っていく。彼の壮絶な怒りと絶望を知った安達が、最後に見た景色とは。誰の心にも兆す”悪”に鋭く切り込んだ、傑作長編ミステリ!

 

「いじめ」それはやった方はすぐに忘却の彼方に忘れ去ってしまうが、やられた方は生涯忘れることの出来な怨みを持つ。

安達が自分のたった一言が原因で、犯人がクラス中から虐められ、学校にこれなくなった事を思い出し、懺悔する姿はそう言った意味では珍しいケースだと言える。

だが、過去の「いじめ」は、決して許されるものではないと考えられる頭を持っていたならば、「いじめ」を止める努力をしなければならない。

安達の犯人の人生を辿る行為は、自分が犯罪を起こさせたのではない、という意味で「逃げ」であることを決して忘れてはならない。

犯人は何故アニメフェスを狙わねばならなかったのか?最後までその疑問は残るが、本書が示した結末が必ずしも正解とはかぎらない。どこかに違和感は残る。犯人が犯行を行った動機は、本人が死んでしまっている以上、正確には解らない。

犯人の人生の躓きのきっかけを作ったのは、何と言い訳しようが安達だ。

そこは、本書を読むうえで忘れてはならない。だからこそ、作者の回答を鵜呑みにしてはならないし、考え続けなければいけない。

本書は、私にとってはそういった書物である。