『震える天秤』
染井為人
角川文庫
あとがき
解説・千街晶之
本書は、2019年8月に小社より刊行された単行本を加筆修正のうえ、文庫化したものです。
令和4年2月25日 初版発行
高齢男性の運転する軽トラックがコンビニに突っ込み、店員を轢き殺す大事故が発生。アクセルとブレーキを踏み間違えたという加害者の老人は認知症を疑われている。事故を取材するライターの俊藤律は、加害者が住んでいた奇妙な風習の残る村・埜ケ谷村を訪ねるが……。「この村はおかしい。皆で何かを隠している」。関係者や村の過去を探る取材の末に、律は衝撃の真相に辿り着く__。横溝賞出身作家が放つ迫真の社会派ミステリ。
『震える天秤』という本書名の意味が最後になって明らかになる構成は見事だし、その取材姿勢も立派なものである、本書の主人公でありフリーライター・俊藤律の心の揺れを見事に描き切った作者の技量は素晴らしい。まるでノンフィクションを読んでいるかのような錯覚に陥る。単純な事故に隠された真相とは……。
但し、この主人公の最後の決断は賛否別れるであろう。
ことを公にするか、もしくは心の中にしまいこむのか?
俊藤律の決断は……。私個人的には、反対の意見である。