『龍の墓』
四六ハード
2023年11月25日 第1刷発行
本作の著者・貫井徳郎のデビュー作『慟哭』を読んで衝撃を受けたのだが、それ以来何故か著者の作品には触れていなかった。
それだけ『慟哭』のショックが大きかったからだと思う。中々ああいった作品は書けないだろうし、『慟哭』を超える作者とは思えなかったからだと思う。何故そう思ったのかは解らないが……
そこで久々に読んだ貫井徳郎作品が本書である。
VRツールが日常に浸透した〈すぐ先の世界〉を舞台に、作者が挑んだのは「本格ミステリ」である。「特殊設定ミステリー」感は正直余り感じなかったが、VRの世界と現実の世界×警察小説かと思いきや、作者は読者に背負い投げをくらわせる。小ネタに貫井徳郎らしさがあるのも嬉しい。何より作品が現実を冷めた目で、というか平常心で見ているのも、また良し。