『案山子の村の殺人』
楠谷佑
ミステリ・フロンティア118
単行本
【ミステリ・フロンティア20周年記念特別書き下ろし作品】
四六ソフトカバー
2023年11月30日 初版
案山子が歩くわけはない。何者かが持ち去ったに決まってるじゃないか。
「僕も真舟も、昔からクイーンが好きだったから。従兄弟同士で合作してるって知って、じゃあ僕らも、っていうのはひとつの動機だった」”楠谷佑”のペンネームでカツ丼する僕ら合作推理作家の、次の新作は土着信仰のある山村で事件が起きる本格ミステリになる予定だ。しかし真舟のプロットは仕上がったものの、執筆担当の僕の作業が捗らない。田舎の村に行ったことがないからだ。だったら、と大学の友人に勧められ、旅館を営む彼の実家がある宵待村に、僕と真舟は旅行に出掛けたが__。
案山子だらけの宵待村で、案山子に毒の矢が射込まれ、別の案山子が消失し、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる”雪の密室”の様相を呈していた。合作推理作家の大学生コンビが謎に挑むシリーズ第一弾!
真舟。真相がわかったっていうのに、
おまえはどうしてそんなに悲しそうな顔をしているんだ?
本書は、【ミステリ・フロンティア20周年記念特別書き下ろし作品】の本格ミステリである。ロジックを上手く使いこなし、伏線回収もキッチリしていて、「読書への挑戦状」が二段階に分かれて挿入されている。
誠にフェアなストレートな犯人当てである。
ちょっとした書き方でネタバレしそうなので、詳しくは書けないが……大変読み応えのある本格ミステリであることは間違いない。