rirasoujiken’s blog

このブログは、鬱病(離人症、乖離。自立支援、手帳3級)である管理人が主にミステリーの読書感想文をアップします。何卒、ご笑覧下さいm(_ _)m

読了しました。

『レモンと殺人鬼』

くわがきあゆ

解説・瀧井朝世

宝島社文庫

刊行にあたり、第21回『このミステリーがしすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作品「レモンと手」を改題のうえ、加筆修正しました。

2023年4月20日 第1刷発行

2023年5月31日 第3刷発行


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十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行っていたのではないかという疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。

 

本書の作者は、第8回「暮らしの小説大賞」を受賞し、『焼けた釘』(産業編集センター)で2021年にデビューしているプロ作家である。通りで文章が達者なはずだ。残酷な事件、登場人物の異常ともいえる心理が盛り込まれている。ただ、ギリギリのところで品が保たれている。無闇矢鱈に残虐行為を描くのでもなく、サイコパス的な性格にも整合性がある。そこに読後の不快感が余りない秘密があるのであろう。様々な章で区切られた中での心理も上手くカモフラージュされていて、犯人の特定が難しくなる工夫がされている。