『バーニング・ダンサー』
阿津川辰海
四六ソフトカバー
初出 「小説 野性時代」
2023年7月号~2023年11月号
2024年1月号~2024年3月号
本書は上記連載に加筆修正を行い、単行本化したものです。
2024年7月26日 初版発行
「あの、私も妹も、交通総務課から来ました」。そう聞いて、永峯スバルは絶句した。犯人を挙げるため違法捜査も厭わなかった捜査一課での職務を失い、異動した先での初日。やって来たのは、仲良し姉妹、田舎の駐在所から来た好々爺、机の下に隠れて怯える女性、民間人を誤認逮捕しかけても悪びれない金髪男だった。着任早々、異様な事件の報告が入る。全身の血液が沸騰した死体と、炭化するほど燃やされた死体。__後に犯人は声明をネットにアップし、日本中を混乱と恐怖に陥れる。相棒を失った心の傷が癒えぬ永峯は、この「警視庁公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課」のメンバーと捜査を開始した。彼らの共通点はただ一つ。ある能力を保持していることだった__。
「コトダマ」……二年前、某国に謎の隕石が落下してから、全世界に突如、百人の能力者が現れるようになった。百の言葉……つまり、コトダマの力を持ち、言葉に応じた能力を発揮することが出来る。そういう能力者たちを、『コトダマ遣い』と呼ぶ
そういった能力者たちを集め事件捜査に使う。それが「警視庁公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課」である。
「コトダマ」を悪用し、犯罪を犯す者たちを調査し逮捕する。
そういった世界観の中で行われる警察×犯罪者の闘いを扱った「特殊設定警察ミステリ」。それが本書である。
この作品の内容を詳しく説明してしまうと、それこそ「ネタバレ」になり兼ねないので詳細は省くが、特殊能力「コトダマ」には、発動条件と能力が届く範囲が決まっており、せこの攻防を描いており、そこに頭脳戦も使われている。そして記しておくべきは、本作が「本格ミステリ」であることだ。
レッドヘディングを置き、伏線を張り巡らせ、それを回収しながら論理的に事件を解決する。
その手順が素晴らしい。