『毒入りコーヒー事件』
朝永理人
『このミス』大賞シリーズ
2023年8月18日 第1刷発行
自室で毒入りコーヒーを飲んで自殺したとされている箕輪家長男の要。「遺書」と書かれた便箋こそ見つかったものの、その中身は白紙だった。十二年後、十三回忌に家族が集まった嵐の夜に、今度は父親の征一が死んだ。傍らには毒入りと思しきコーヒーと白紙の遺書__要のときと同じ状況だった。道路が冠水して医者や警察も来られないクローズドサークル下で、過去と現在の事件が重なり合う。
おそろしく簡単な事件かと思わせておいて、とてつもなく深い真相が語られる様は、まるで芸術作品を彷彿とさせる。
文章の上手さと相まって、作者の語りには惚れ惚れしてしまう。
そして幾重にも重ねられた謎が浮かび上がってきた、そのとき小説の余韻に読者は浸れるであろう。