『301号室の聖者』
織守きょうや
解説・今村昌弘
「木村&高塚弁護士」シリーズ
・本書は2016年に講談社より単行本刊行されました。文庫化にあたり加筆・修正をしました。
2022年8月7日 第1刷発行
新米弁護士の木村は医療過誤をめぐる損害賠償請求訴訟を初めて担当するけとになった。笹川総合病院の301号室では、不自然な医療事故が度々起こり、立て続けに患者が亡くなってしまう。医療従事者のミスなのか、誰かによる故意の「何か」があったのか。木村は先輩弁護士の高塚と共に、死と対峙する医療現場で起きた難事件に挑む。大ヒット『花束は毒』で注目を集める著者による、命の重さを問う長編リーガル・ミステリー。「木村&高塚弁護士」シリーズ第二弾!
内容要約に間違いがある。「難事件」ではない。患者の死亡事件である。
そして、その裏ではとてつもない「殺人計画」が練られていた。
本書は、延命治療についてまわる患者やその家族の苦悩を見事に描いた小説でもある。
事件が中々起きないので、イライラする読者もいるかも知れないが、少なくとも私にとっては至福の読書であった。
相変わらず、非常に重たいテーマを扱っているにも関わらず、テンポよく読むことが出来た。事件の出し方も上手い。
新米弁護士・木村が様々な苦悩を抱え込む姿はまるで自分の姿をみるのと同じように思えたし、先輩弁護士の高塚のドライでありながらも木村を気遣う姿も良い。
ふたりは、決して「名探偵」ではないけれど、そこに共感(親しみ)を感じる読者も多いであろう。
本書に描かれているテーマは、自分の人生においても必ず起こり得ることだ。
高齢化社会を迎えている今だからこそ、目を背けてはいけない。
いざ、その時になっても慌てないように、本書を読むのも良いであろう。