『消えた依頼人』
田村和大
PHP文芸文庫
本書は、2021年3月にPHP研究所より刊行された作品に、加筆・修正をしたものです。
2023年8月21日 第1版第1刷
真実は__法の向こう側。かつて殺人罪に問われた女性の無罪判決を勝ち取った敏腕弁護士の大石は、今度は医療過誤訴訟を手掛けていた。勝訴となれば更なる名声を得られるとほくそ笑む大石だったが、その裁判当日、原告は法廷に姿を見せず、後日、原告の自宅を訪れると、そこには全くの別人が!?弁護士資格を剥奪されかねない窮地に追い込まれた大石が講じた、起死回生の一手とは。傑作リーガル・ミステリー。
本書は、敏腕弁護士・大石がある罠に嵌って苦悩する物語である。その最中にも2件の依頼を受け解決するが、そちらも本筋に負けず劣らぬ秀作(むしろ、こちらが本筋かと思えるくらい)であるという素晴らしい作品である。ネタばれになるので詳しくは書けないが、法律に従うのと納得するのでは全く違うという旋律が常に根底に流れており、それがまた作品を面白くさせているところはさすがだ。