『風神館の殺人』
PHP文芸文庫
2022年5月23日 第1版第1刷
本書は、2018年11館にPHP研究所から刊行された『崖の上で踊る』に加筆・修正を行い改題したものです。
高原の保養施設「風神館」に集まった10人の男女。彼らの目的は、自分たちを不幸に陥れた企業の幹部3名に、死を以って償わせること。計画どおり1人目を殺害した彼らが目にしたのは、仲間の1人の変わり果てた姿だった。誰かが裏切ったのか?!このまま復讐計画を進めるべきなのか?!皆が疑心暗鬼にかられる中、さらに仲間が殺されてしまう……。信頼と猜疑が交錯する密室ミステリの秀作。
最初にひとつ訂正をしておく。本書には密室は登場しない。因みにクローズドサークルでもない。犯人は逃げ出そうと思えば、いつでも逃げられた。
但し、外部からの侵入はありえない。そこは作品内で確認されている。
ただ、登場人物たちは皆復讐者であり、殺人者であるから、警察の関与という選択肢はない。
もちろん救急車も呼べない。
復讐を完遂するまでは捕まるわけにはいかない。そういった状況で起こる連続殺人……
仲間の中に裏切り者がいる?
緊迫した舞台で始まる犯人探し。
奇抜な発想で紡がれた本作は、本当によく出来たミステリである。